歯とアルツハイマー型認知症の関係

9月は世界アルツハイマー月間

国際アルツハイマー病協会と世界保険機関(WHO)は9月21日を「世界アルツハイマーデー」に制定し、この日を含む9月を「世界アルツハイマー月間」と定めています。
日本でも高齢化社会が進み、認知症のご家族の介護などをなさっている方が増えています。
2020年時点で、日本における65歳以上の認知症患者は602万人となっています。
認知症患者の増加に伴い、認識は広まりつつありますが、まだメカニズムや治療法について解明されていない点も多いのが現状です。

歯の本数が少ないとアルツハイマー型認知症になりやすい

欠損歯(通常あるべき歯がない状態)の患者66万人を対象とした研究では、以下のようなデータが示されています。
ちなみに、親知らずを除いた、「28本」が永久歯の正常な本数です。

グラフから分かる通り、歯を多く失っている人ほどアルツハイマー型認知症の発症リスクが増加します。

これは、食事の際にしっかり噛むことができるかどうかに関連していると考えられています。
あまり噛まないことが習慣化すると、噛むという行為で刺激される脳の領域は活性化しづらくなります。
これを「廃用萎縮」を言い、寝たきりの方の筋力が低下するのと同じように、脳も使われない状態が続くと弱っていくのです。
噛むことで刺激されるのは、「前頭前野」という領域で、思考や計画立案、学習などの論理的な働きを担う脳領域です。

歯周病もアルツハイマー型認知症の発症リスクになりうる

九州大学が発表した論文によると、歯周病原菌を投与したマウス群では、投与しなかったマウス群と比較して、アルツハイマー型認知症の原因となる「アミロイドβ」が約10倍量検出されたそうです。

アミロイドβはタンパク質の一種で、脳器質に蓄積されていきます。
蓄積されたアミロイドβの影響で神経細胞が死滅し、情報伝達が困難となり、脳は萎縮していきます。
その結果、アルツハイマー型認知症を発症する可能性が上昇すると考えられています。

アルツハイマー型認知症を予防するために

さまざまな認知症予防がありますが、ここでは「歯から」できるア認知症予防について説明します。

欠損歯を減らす

歯を抜かざるを得なくなる原因としては以下のものが挙げられます。

  1. 重度歯周病
  2. 深い虫歯
  3. 歯根破折(歯の根が割れる)

これらを防ぐには、定期的な歯科検診やクリーニング、早期診断と早期治療が非常に重要です。

また、歯列不正(叢生・出っ歯・すきっ歯など)は歯周病・虫歯を悪化させ、咬合不良による歯根破折のリスクを高めるため、できるだけ早めに矯正治療を行うことが将来の欠損歯を減らす有効な手段となります。

歯周病を予防する

歯周病は複合的な要因で引き起こされる疾患です。

  1. 細菌因子:歯周病を引き起こす特定の細菌の感染
  2. 宿主因子:加齢や持病(特に糖尿病)などの状態
  3. 環境因子:喫煙や歯磨きなどの状態
  4. 咬合因子:かみ合わせのパワーバランスの状態

歯周病は程度の差はあれ、大半の成人が罹患する国民病の一つです。
働き盛りの40歳以上で特に罹患率が上昇します。

ご自身でできること
・適切な歯磨きができるように早いうちから練習を行う
・歯周病と関連の強い生活習慣病を防ぐため、食事や運動に気をつける
・喫煙は歯周病や虫歯などあらゆる歯科疾患を増悪するため、早期に禁煙する

歯科医院でできること
・定期検診、クリーニング
・かみ合わせのチェック
・咬合不良や歯の形態不良などご自身では気付きづらい口腔環境への介入
・歯列不正の改善によりセルフケアしやすい歯並びに整える

よく噛む

よく噛むとこは脳の廃用萎縮を防ぐだけでなく、消化器の負担を軽減したり、顔のたるみを防ぐなどの効果もあります。
痛みがあると食事を噛むのが難しいですし、歯並びが悪いとしっかりと食べ物をすりつぶすことができません。
しっかり食事を噛んでから飲み込んでいるか、一度意識してみましょう。

早期発見・早期治療が一番重要

全ての病気に共通することですが、歯科疾患に関しても「早期発見・早期治療」は非常に重要です。
コロナ禍では歯科医院への通院を躊躇する方もいらっしゃいますが、「何かおかしい」「少し痛みを感じる」という方は歯科医院を受診すべきです。

違和感を感じながらも、受診を延期しており、残念ながら抜歯や神経を取る処置を避けられない状態に陥る方も増えています。
現時点では、抜いた歯は二度と戻りませんし、神経も再生することはできません。
歯は一生ものです。

感染症対策をきちんと行っている歯科医院では安心・安全に治療を受けていただくことができます。
違和感を感じたら、歯科医院を受診しましょう。