2021.04.12
【CASE】インプラントの代わりに親知らずを利用した矯正治療
治療概要
- 患者様
- 23歳 女性
- 診察結果
- 右下最後臼歯の重度う蝕、叢生、交叉咬合
- 治療内容
- 保存困難歯の抜歯、親知らずの牽引を含む歯列矯正治療
- 治療完了日と治療期間
- 2021年4月2日(2年6ヶ月)
- 総治療費
- 約75万円(税込)
- 治療後のメンテナンス
- 後戻りの確認およびう蝕や歯周病のメンテナンス
- その他
- リテーナーの装着とセルフケアを指導
患者様の相談内容


「右下の奥歯が痛い」とのご相談で来院されました。
外から見るとわかりませんが、X線画像では右下の最後臼歯に親知らずが突き刺さるように動いてきており、残念ながら最後臼歯(一番奥の歯)は保存することができない状態でした。
親知らずが奥歯に接して埋まっている場合、図のように根の吸収が起こり、神経が侵されることがあります。
- 親知らずを長期間放置すると、奥歯を抜かなければならなくなる場合がある
- 奥歯の痛みは表からだけではわからない部位が原因の可能性があるため、早期に歯科医院を受診する
山道歯科の診断
本来、最後臼歯を失った場合にはインプラント治療が最適な治療方法となりますが、比較的高額な治療となります。
今回はご相談の上、親知らずを引っ張り奥歯として噛める状態に活用する方法を選択しました。
親知らずの状態に問題がなければ、インプラントの代わりに親知らずを活用することが可能です。

また、右下以外にも全体的に叢生(乱杭歯)や交叉咬合(部分的な反対咬合)など、歯列不正が見られたため、MTM(部分矯正)ではなく、全顎矯正治療を行う方針となりました。
奥歯の位置を改善する必要がある場合、全顎矯正治療が推奨される可能性が高いです。
こちらの患者さまはワイヤーでの矯正治療を選択しましたが、親知らずの部分のみワイヤーを併用するインビザライン矯正治療(マウスピース矯正)も選択可能です。


診査の結果、小臼歯抜歯矯正は必要なく、非抜歯矯正治療で可能なケースと診断しました。
ただし、矯正治療の際には親知らずに関しては基本的に抜歯が必要です。
今回の患者さまも上下左右4本の親知らずを抜歯し、矯正治療を進めることになりました。
- 奥歯を抜歯後、インプラントの代わりに親知らずを活用する方法がある
- 親知らずを含む矯正治療ではかみ合わせの安定のため、全顎的な治療が推奨される可能性が高い
治療の流れ

まず、保存困難な右下最後臼歯の抜歯しました。

抜歯後の治りを待って、矯正装置(マルチブラケット)を装着し、矯正治療を開始します。
ワイヤー矯正では、1本1本の歯に小さな装置を装着します。

ワイヤーを適宜交換・調整しながら、矯正治療を進めました。
途中ご来院が難しい時期もあり、治療期間は約2年6ヶ月と長くかかりました。
- 矯正治療ではゴムかけが必要な治療ステージがある
- 矯正装置撤去後は保定期間が必要
治療期間終了後

1番目:初診時
2番目:途中経過(6ヶ月)
3番目:途中経過(9ヶ月)
4番目:親知らず移動終了(13ヶ月)
右下の親知らずはおよそ13ヶ月で移動が終了しました。
形も被せ物などは必要なく、かみ合わせの微調整だけで良好にかめる状態になりました。
ただ、親知らずを引っ張るだけでは傾いたまま動いてしまい、きちんと噛めない上、長期予後が悪くなります。
長期間機能できる歯の移動のためには、傾いた親知らずを直立させた上で手前に引っ張る必要があります。
通常のワイヤーだけではこのような移動は不可能で、特殊な曲げ方のワイヤーが必要です。


上下とも歯列のアーチが整い、犬歯の反対咬合も解消されました。
上顎の2番目の歯が矮小歯(生まれつきサイズの小さな歯)だったため、直接詰めるレジンで形を整えて終了しました。
インプラントではなくご自身の親知らずを活用することで、治療費用を大幅に抑えることができ、さらにインプラントと同様にしっかりと咬むことができるようになりました。
歯科矯正治療は矯正装置装着後、個人差がありますがある一定の期間痛みを伴いますので、食事がとりにくかったり、物が噛みづらい、発音しづらいなどの不快感を伴う場合があります。口の中が狭い人、広い人で痛みの度合いが変わります。また、矯正治療は定期的な通院などの患者様のご協力が必要です。矯正装置の種類によりメリットデメリットがありますので、詳しくは治療計画説明の時にお伝えいたします。
上記説明は例を挙げての治療の説明であり、個々の患者様の状態等により治療の費用、方法や結果が異なります。治療の方針や治療費、治療等の主なリスクや副作用等に関しては治療開始前にご説明しますので、まずは当院まで治療の相談を予約して下さい。